娼家の女主人とその客、女主人から逃れたいヒモの青年、若い娼婦とその客の若い男が繰り広げる“家族ごっこ”。その先にあるのは……。
挑発的、熱狂的でありながらも、美しい詩的なセリフが印象的な数多くの伝説的戯曲を生み出した劇作家・清水邦夫。本作は、1969年に安部公房の推薦で俳優座公演のために書き下ろした作品です。劇作を始めて約10年たち、劇作家として一本立ちするのにふさわしいものを追い求めていた清水邦夫が新しい世代の作家としての地位を確立した、まさに転機の一作と言われています。
演出は2022年に上演された『加担者』と安部公房作の『幽霊はここにいる』の演出で第30回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞した、今最も注目をあつめる演出家・稲葉賀恵が務めます。
現代は若者が熱をもって物事に向き合うことが難しい時代と言われています。狂気の中にも不思議と人を引き付ける力強い魅力を持つこの戯曲を、現代の演出家が手掛けることにより、人は本来何を求めているのか、この戯曲の熱の正体は何なのか問いかけます。